2009-01-01から1年間の記事一覧

そして、彼女は旅立った

人生の幕引き、と人は言う。しかし、これほど決然とした幕引きがあっただろうか。 6年前の冬。知らせが入ったのは、師走も押し詰まった30日午後早く。出勤直前、知人からのメールだった。当時新聞社の編集局にいた私は、この日朝刊の社会面編集担当。家を飛…

緑の王宮 海の女神

「半分インドネシア人」。半端に話せるインドネシア語のせいで、クラスでなぜか名誉の? 呼び名をもらっている。とはいえ、ここは中国。インドネシア人同学とも、普段は意識して中国語で話すようにしている。が、今日は授業最終日。久しぶりにインドネシア語…

再見

今日で期末試験も終了。クラスの半分は年明けに帰国する。この半年はあっという間だった。言いたいことの三分の一ぐらいは、ようやく言えるようになったのに。 最後の一人の会話試験が終わるのを皆で待ち、同級生十数人で近所の東北料理屋へ。一緒に食べる“…

バンコク発 温州行き

「工場を開くなら、温州がお勧めですよ」 タイ華僑の友達が、何の気なしに発した言葉。“世界の工場”中国でも、私自身が開設を勧められたのは、さすがに初めてだ。 二十代後半の彼は、バンコク生まれ。大学卒業後に上海に短期留学し、その後英国で修士号を取…

白い街

今朝のスモッグはすごい。窓を開けたら外は真っ白。数百メートル先のビルも見えない。 週末以降、天気は崩れるらしい。雨が降れば空気はきれいになる。つまり水が汚れるということだ。 街全体がすっぽり“汚染”に包まれている。逃げ場がない。じたばたしても…

百年の後に

陳可辛(ピーター・チャン)と陳徳森(テディ・チャン)から、今年最後の大きなプレゼント。「十月圍城」。 文句なしに今年のベスト。個性豊かな登場人物、懐深い俳優たち、磨き込まれた作り手の技。過去と未来を見通す確かな視線。何より“物語”への深い思い…

大陸の懐で

「世界がゆっくりと逆転を始めている」 香港の北の海辺で、大陸へ密輸される高級海鮮。東南アジアから生きたまま運ばれ、深センの胃袋に吸い込まれる魚たち。写真家・星野博美さんは、著書「転がる香港に苔は生えない」で書く。「香港は一日たりとも中国なし…

「我慢できないんだよ!」

早いもので、今学期も今月いっぱいで終わる。試験前で忙しくならないうちに、同級生十数人で食事に行った。狭い下町の中華料理屋。丸いテーブルを肩寄せ合って囲む。両隣に座ったのは、パオチンとインチャイ。 インドネシアの女の子・パオチンは、カリマンタ…

私たちの住む世界

言葉って生きている、としみじみ思う。 たとえば「人間」という単語。日本語では人そのものを示すが、中国語では私たちが住むこの世界、“天下”を表す。 何かにこだわること──中国語では悪いニュアンスで「固執」という。逆に肯定的に使う場合は「執着」。日…

「孫文、香港に到着」

20世紀初めの香港。薄暗く狭い部屋。小さなテーブルを囲んだ十数人の同志を前に、孫文が決意を述べる。「幸福を勝ち取るために、痛みは避けられない。その痛みこそ、革命なのだ」 孫文暗殺計画を描いた「十月圍城」。5分を超える最新版予告編を、今日初めて…

将たる顔

“香港導演三剣客”のインタビュー、文章に添えられた3人の写真が素晴らしい。それぞれ個性を生かしたワンショット。 馬偉豪(ジョー・マー)はカジュアル。紺の麻ジャケット、白地に細い赤のストライプシャツ、ジーンズにサンドブーツ。椅子に足を組んで腰掛…

「鬼に会ったら、怖いだろうねえ」  鄭保瑞(ソイ・チェン)

もし鄭保瑞(ソイ・チェン)から、映画監督という肩書きを外したら。着ているものを含め、彼という人間を示す属性を取り払ったら。ごく普通の運送業者か、あるいは活動に精を出す熱血青年か、あるいは日々すれ違いそうな隣家の男か……つまりは彼の外見から、…

暴れ馬の転機

「意外」が東京フィルメックスで上映された。雑誌「香港電影」9月号で特集が組まれている。鄭保瑞(ソイ・チェン)監督インタビューもあり、記者の最初の一言が面白い。 「あなたの作品を見続けて来た人は、失望するかもしれません。僕の好きだったソイ・チ…

好電影

香港映画好きたちが、複雑なため息を漏らしている。NHKスペシャル「チャイナパワー 電影革命の衝撃」。私は未見だが、ため息の原因は陳可辛(ピーター・チャン)らしい。飛ぶ鳥を落とす勢いの中国映画ビジネス。ぎらぎらした投資家たちの真ん中に、「新難…

王晶の感傷

閑話休題。週末は香港へ。目的は「旺角監獄」。今日はピーカン。気温も上がり、海風が気持ちいい。星光大道を歩く。人もビルも多いせいか、広州より温かく感じる。 香港文化センターで、催し物をチェック。来月の鄭伊健(イーキン・チェン)演唱会、元旦! …

「じっとできない」 大きな子供  葉偉信(ウィルソン・イップ)

「葉問」を見た人はみな、監督が葉偉信(ウィルソン・イップ)であることを心に留めるだろう。香港の若手・中堅監督の中で、最も優れた作り手の一人である彼は、「龍虎門」「導火線」など多くのアクション映画を撮ってきた。しかし、淡いピンクのシャツとチ…

「男くさい映画? 絶対に撮れないよ」  馬偉豪(ジョー・マー)

自作自演の舞台劇が、映画界の実力者・黄百鳴(レイモンド・ウォン)の目に止まり、“ラブストーリーの伝道師”の道を歩き出した馬偉豪(ジョー・マー)は、少年時代の夢をかなえた。彼の最初の“師匠”は、香港演劇界のリーダー・高志森(クリフトン・コウ)だ…

三剣客の協奏曲

“香港導演三剣客”が、北京のスタジオに顔をそろえた。 “喜劇の父”馬偉豪(ジョー・マー)、“ドル箱監督”葉偉信(ウィルソン・イップ)、“鬼”の鄭保瑞(ソイ・チェン)──続く記事翻訳は、香港の個性派監督へのインタビュー。現代香港映画を引っ張る、四十代の…

冬天来了

寒い。寒い。寒い。最低気温が10度を切った。スーパーもバスも校舎も、暖房のない広州。インドネシア、ベトナム、タイの同級生たちは、寒さに肩を震わせている。空っ風の日本と異なり、風は冷たく湿っている。 「サムイネ!」。韓国の女の子たちが、日本語で…

黒い油 灰色の霧 雲間の光   「証人」(08)

「ものを作る工場には、たくさん機械があります。世の中のほとんどの人は、有名メーカーの機械は手入れをして、大事に使い続けるでしょう。でも、隅に置いてある名もない機械は、壊れたら新しいものに替えられるだけです。実をいうと、この古ぼけた機械は長…

「過去の苦労は、話さないよ」  苦節20年 張家輝(ニック・チョン)

張家輝(ニック・チョン)が、“影帝”の座に就いた。ため息をついた人も多いだろう。苦節20年。小さな役を演じ続け、長い下積みに耐え、ついに今──。「証人」(林超賢=ダンテ・ラム=監督)で、香港電影金像奨主演男優賞を獲得してから半月たった。目の前に…

最大限の敬意を込めて

広州も香港と同じように、街のあちこちに新聞スタンドがある。日刊紙、週刊誌、ファッション雑誌、専門誌。隅にはライター、ティッシュなど雑貨からミネラルウォーターまで、小さなスペースにぎっしりと並べられ、奥にちょこんと店主が座っている(香港とは…

昨夜から今朝にかけて、断続的にすさまじい雨が降っている。広州は9月以降、ほとんど雨らしい雨が降らなかった。珠江の水も、目に見えて減り始めていた。雨は今も降っている。数カ月の埃を流すように。 大通りを隔てた向かいに、高層アパートがある。ベラン…

司機

北方はおしゃべり。南方は無口。逆だと思っていたので、意外だった。 タクシー運転手のお話。

與你一起時的片段

http://blog.tvb.com/teresamo/2009/03/31/%E6%80%9D%E5%BF%B5/

おっとりとした わが街 広州  「秋喜」(09)

海珠大橋。天字碼頭。れんげでかきまぜるたび、具が見え隠れする、南方風の粥。二階のバルコニーがせり出し、一階部分の雨よけになる“ショップハウス風”の建物は、湿気で黒くかびている。共産党のスパイでありながら、ゆったりと、どこか優柔不断な、郭暁冬…

青天の霹靂

目の前を、林夕が、かすめていった。

为什么? Kenapa?

这个星期有期中考试。我的脑子已经怀了。为什么生词这么多?累死了。 Minggu ini ada ujian yang semester tengah. Kepala saya hampir mati. Kenapa ada kosakata banyak begini? Capet sekali.

恐れや、憧れや、愚かさや、美しさに満たされた人生

ホー・ユーハン監督の新作「心の魔」、ヤスミン・アフマド監督の遺作「タレンタイム」。マレーシアを代表する独立系監督の作品を、東京国際映画祭でごらんになった方も多いだろう。マレーシアとはどんな場所なのか──この機会に、私の短いマレーシア暮らしを…

帰ってきたエスプレッソ

彗星のごとく、帰ってきた。 10月7日に候補作が発表された台湾金馬奨。羅卓瑤(クララ・ロー)監督の「如夢」が、作品、監督、主演男優・女優、脚本、撮影、美術、音楽、音響効果の最多9部門でノミネートされている。 クララ・ローといえば、“移民”である…